「個人事業主から法人成りをするタイミングはいつがベスト?」
「どのタイミングで法人化したら有利だろうか?」
個人事業主として順調に事業が成長して規模が大きくなると、法人化すべきか検討しはじめる人も多いのではないでしょうか。
しかし、どのタイミングで法人成りをするべきか悩みどころですよね。法人化するタイミングは、事業主の考え方や業種によっていろいろです。
そんな法人成りをする最適なタイミングを知るには4つの目安があります。
以上のタイミングを踏まえ、法人成りを慎重に検討してすることが大切です。
そこでこの記事では、4つの目安となるのポイントをわかりやすく解説し、どのタイミングで法人成りすべきかを紹介してます。
また、法人成りを「何月に行うべきか」について、手続きのスムーズさや節税の観点から解説致します。
最後まで読んでいただくとご自身にとっての最適な法人成りのタイミングを判断できるようになりますよ。それでは、法人成りのタイミングについて一緒に見ていきましょう。
1.最適な法人成りのタイミングを判断する4つのポイント
個人事業主から法人成りをするタイミングは、一般的に個人事業の利益額が800万円を超えたあたりで検討するとよいと言われています。
しかし、実際には利益額以外にも法人化する際に考慮すべき判断ポイントがあり、事業の状況や考え方によって見極めることが大切です。
そこで、最適な法人成りのタイミングを判断するために、以下の4つのポイントから解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.個人事業の利益額が800万円を超えたタイミング
法人成りのタイミングを考える場合の1つ目のポイントは、個人事業主としての利益額が800万円を超えたタイミングです。その理由は、所得税と法人税の税率の違いにあります。
個人事業主の所得に課税される税金が「所得税」、法人の所得に課税される税金が「法人税」です。所得税の税率は5〜45%で、収入が増えれば増えるほど必然的に所得税が高くなる仕組みです。
一方で、法人税の税率は、利益が800万円以下は15%、それ以上は23.2%と比例税率のため、いくら利益が上がっても税率は変わりません。実際に所得税と法人税の税率を比べて見てみましょう。
▼令和3年4月1日現在「所得税」の速算表
課税される所得(利益)金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
▼令和2年4月1日現在の「法人税」の税率
純利益 | 事業開始年度がH30年.4.1以降 |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% |
※参考:国税庁
具体的に以下の計算式で税率を計算してみると、利益額が800万円を超えると納める税金額が個人事業主でいるよりも、法人の方が安くなることがわかります。
【個人事業主】:課税所得×税率ー控除額=所得税額
【法人】 :課税所得×税率=所得税額
課税対象となる金額 | 所得税 | 法人税 | |
600万円 | 77万2,500円 | < | 90万円 |
700万円 | 98万円 | < | 105万円 |
800万円 | 120万円4,000円 | > | 120万円 |
900万円 | 143万円4,000円 | > | 143万円2,000円 |
1,000万円 | 176万円4,000円 | > | 166万円4,000円 |
利益額800万円を超えたら法人成りを検討すると良いと言わる理由は、800万円を超えると法人税の方が安くなるためです。
ただし、所得控除や事業以外の所得があるかなどによっても条件は大きく変わります。法人成りするべきか判断する一つの目安として踏まえておくと良いでしょう。
1-2.売上高1000万円を超えたタイミング
個人事業主から法人成りをする適したタイミングを判断する2つ目のポイントは、売上高が1000万円を超えたタイミングです。
その理由は、売上高が1000万円を超えると消費税納税の義務が発生するためです。個人事業主の売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税納税事業者となり、消費税納税の義務が発生します。
例えば、上記の図のように、2020年に売上高が1000万円を超えた場合、2022年に消費税を納税することになります。
しかし、適切なタイミングで法人成りをすることで、消費税を収める時期を2年先送りでき、最大で4年間免税できる可能性があります。
1-2-1.法人成りで最大4年間免税できる
新規設立法人は消費税納付の義務が2年間免除されます。さらに、個人事業主の免税期間2年間と法人設立の免税期間2年間をうまく合わせることで、最大4年間の免税がされます。
例えば、上の図のように2020年に売上高が1000万円を超えた場合、2022年に消費税の納税義務が発生しますが、2022年のに法人成りすることで、消費税納税を2年先送りにすることができ、4年間の免税を受けることができるのです。
売上1000万円以上を継続的に超える見込みがある場合は、消費税の免税を最大化できるタイミングで法人成りをすることで節税することができます。
1-3.社会保険の加入を検討するタイミング
個人事業主から法人成りする適したタイミングを判断する3つ目のポイントは、社会保険の加入です。個人事業主が入る社会保険は、国民健康保険と国民年金ですが、法人成りをすると代表取締役1人でも社会保険に入ることが必須です。
また、個人事業主であっても、常時雇用する従業員が5人以上になると社会保険に加入しなければなりません。業務内容の実態が個人では難しくなり、従業員を増やすことの方が懸命になったら、法人成りを検討するタイミングと言えるでしょう。
社会保険に加入することで、福利厚生が充実しますので、人材確保の面で有利になります。また、経営者にとっては、将来の年金収入が増えるというメリットがあります。一方で、会社としては保険料の負担や人件費の負担が生じます。
社会保険の加入で法人成りを検討する際には、メリット・デメリットの要素を考えた上で、法人化を判断することが必要です。
1-4.事業拡大を視野に入れたタイミング
個人事業主から法人成りに適したタイミングを判断する4つ目のポイントは、事業拡大を視野に入れたタイミングです。一般的に、個人事業主よりも法人の方が社会的に信用度が高いと言われています。法人は登記簿謄本により、会社の所在地や資本金などの重要事項を確認できるためです。
法人成りを実現することによって信頼性が高まれば、以下のように事業拡大がしやすくなります。
- 販路の拡大
- 新規取引先の開拓
- 利益や知名度の向上
また、銀行から借入を行う場合にも、法人化することで借り入れやすくなりますので、資金調達の面で有利になります。「公共事業の仕事への参入をしたい」「活動の幅を広げたい」など視野に入れはじめたら、法人化を検討するタイミングが来たと考えて良いでしょう。
2.法人成りをするベストタイミングは何月?
個人事業主から法人化するためのポイントがわかり、どのタイミングで法人成りするべきか判断ができたら、今度は実際に「いつ」「何月に」法人成りすべきか見ていきましょう。
法人成りをするベストなタイミングをはかるポイントは以下の3つです。
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それぞれ、詳しく見ていきましょう。
2-1.申告をスムーズに法人成りするなら1月
スムーズに法人成りをしたいと考えている方は1月がおすすめです。なぜなら、1月に法人成りをすると初年度の申告がスムーズに行えるためです。
個人事業の場合は1月〜12月までの1年間の業績を計算し、3月15日までに確定申告をしますよね。一方で、法人は自由に会社設立日を決めて、設立月を起点に1年間の決算報告を行います。
例えば、5月に会社を設立したら、翌年の4月が決算月となります。会社の決算は2ヶ月後までに行う必要があるため、6月までに決算申告を行うことになります。この場合、法人成りをした初年度は、1年間の間に確定申告と決算報告の両方をしなければなりません。
次に、1月に法人成りをした場合を見てみましょう。会社の決算月が12月になりますので、2020年度は確定申告、2021年度は法人の決算申告と分けられるため、スムーズに申告することができます。
以上のことから、1月に法人成りをおこえば、確定申告と決算申告が重なることなくスムーズに事業をスタートさせることができるでしょう。
2-2.売り上げのピークに合わせたタイミング
季節で売り上げが左右される業種の場合、売り上げがピークになるタイミングに合わせて、事前に法人成りの手続きを進めておくとよいでしょう。
なぜなら、売り上げがピークを迎える形で法人化をすることで、節税効果を最大化することができるからです。
2-2-1.繁忙期前に法人成りを終わらせるのがベスト!
とはいえ、繁忙期のタイミングで法人成りをするには注意が必要です。
売り上げが増える繁忙期に法人成りのタイミングが重なってしまうと、法人化の手続きに追われて、トラブルやミスが起きやすくなったり、売り上げを伸ばすチャンスを失ってしまうかもしれません。そうならないために、繁忙期の前に法人成りを完了してから売り上げのピークが迎えられることがベストです。
例えば、不動産業であれば引っ越しシーズンに合わせ、年明けごろに法人成りの手続きを終わらせるイメージです。業種ごとの売り上げのピークに合わせてタイミングを逆算し、準備するようにしましょう。
2-3.助成金や補助金を利用するなら4月〜6月
助成金や補助金は、国や地方自治体などが中小企業の活性化など、特定の目的に沿って予算化され支給される資金です。決められた基準に合致する事業者に対して支給され、原則、返済は不要です。
申請するには条件がありますが、創業する人のための補助金や助成金には主に以下のようなものがあり、支給される補助金の額は数十万円〜数百万円ほどです。
- 創業補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
- IT補助金
この制度の要件が発表されるのが毎年3月ごろで、4月〜6月ごろまでに募集されます。助成金や補助金を活用を検討している方は、制度の要件などを確認してから法人成りのタイミングも検討することをおすすめします。
助成金や補助金は年間を通して応募できるわけではありませんので、最新情報をしっかりキャッチして募集を見逃さないようにしましょう!
3.法人成りにかかる期間
個人事業主から法人成りをする会社設立の期間は、一般的に2〜3週間ほどと言われています。
ですが、こちらは事前準備をしっかり行っている場合の期間です。また、自分で法人成りする場合と、専門家に依頼する場合でも期間は大きく異なりますので、事前に必要な準備を行い、専門家に依頼するかなどを決めておくことが大切です。
会社設立は、書類の準備や資本金の払い込みなど、やらなければいけないことが多くあります。手続きなどで慌てたり、二度手間とならないよう、事前にスケジュールを立てておきましょう。
4.法人成りをするための手順
個人事業主から会社設立をする手順は、大まかに分けて「準備」「設立手続き」「資本金の払い込み」「登記申請」の4つのステップです。
大まかに言えば、法人の基本的な事柄を決め、設立して登記するという流れになります。そのあとで、個人事業から資産を移管し、個人事業を廃業します。
法人成りは、個人事業がそのまま格上げされて法人になるというわけではなく、全く別の法人格を持った団体を作り、個人事業を廃業するという形です。
それぞれを見ていきましょう。
4-1.【法人成りの手順1】設立するための準備
会社設立にあたり、設立するための準備が必要です。まずは会社の基本事項を決めるところから始めましょう。
主な事項は以下のとおりです。
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まずはじめに、会社の形態を決めるところからはじめます。形態にはいろいろありますが、主に「株式会社」と「合同会社」があります。
営利目的での事業を考えているなら株式会社がおすすめですが、「設立費用を抑えたい」「比較的規模が小さな組織を予定している」などの場合は、合同会社という選択技を視野に入れても良いでしょう。
また、この段階でやることとして、商号(社名)が決まったら、会社の印鑑(実印、銀行印、角印)を早めに作っておくことをおすすめします。手彫りで作るなどの希望がある場合、数週間かかることもあります。会社設立日に間に合わないということがないように、設立日との兼ね合いを見ながら印鑑を早めに発注しておきしょう。
基本事項を決めて準備を明確にしておくことで、この後のプロセスがスムーズになり、法人成りの期間を短縮できるでしょう。
POINT
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4-2.【法人成りの手順2】設立手続き(定款作成と認証)
準備が整ったら、次は具体的な設立の手続きへと進みます。
定款とは、会社の根幹となる規則のことで、会社における「憲法」のようなものです。定款は、株式会社なら発起人による作成が必要となります。定款作成自体はサンプルや雛形などもあるため、数時間程度で完了させることもできます。
定款を作成したら、公証役場で認証を受ける必要があります。定款認証には以下の書類が必要です。
- 定款(3通)
- 発起人の印鑑証明書(全員分)
- 収入印紙(紙の場合)
- 発起人の実印
- 身分証明証
- 委任状(代理人が定款認証に出向く場合)
定款認証の前に、書類の間違いがないか公証役場に事前にメールやFAXなどで確認してもらうと、修正の手間がかからずスムーズに行えます。混み具合や修正などにもよりますが、30分〜1時間程度で完了します。
POINT
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4-3.【法人成りの手順3】資本金の払い込み
新会社法が制定されたことにより、最低資本金1円から会社設立が可能です。
この時点では法人の口座はまだありませんので、資本金を出資する人の個人口座を使います。資本金を振り込む日時は、定款認証された日よりも後である必要があるので注意が必要です。
資本金の払い込みが終わったら、払込証明書を作成します。
事前の準備の段階で、誰がどれぐらい支払うかを決めておくことで会社設立にかかる期間を短縮することができますので、事前に決めておくとスムーズです。
POINT
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4-4.【法人成りの手順4】登記申請
法人登記は法務局で行う手続きです。
登記申請は、認証された定款のほかに、法人の印鑑届出書、資本金が払い込まれたことを証明する書類を準備し、法務局へ提出します。また、法務局へ登記申請に行った日が「会社設立日」となります。
書類に不備がなければ1週間〜10日程度で登記が完了します。
POINT
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5.簡単3ステップで会社設立ができる「マネーフォワード」
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会社設立の際には、用意しなくてはならない必要書類があり、自分で揃えるには手間のかかる作業です。マネーフォワードを利用することで、提出する書類をまとめて作成することができます。
そのほかにも、利用するメリットは以下のようにたくさんあります!
- 電子定款の作成が無料である
- 会社設立をした後のサポートが充実している
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会社設立後も、バックオフィスツールや決済システムなど、業務支援ツールをお得に利用できることも嬉しいポイント!
資料をダウンロードできるので、まずは資料をよく読んで検討することをおすすめします。
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6.法人成りで悩んだら税理士に相談しよう
法人成りするべきタイミングは、状況や業種によって異なります。
さらに、所得控除や事業以外の所得の有無などによって条件が大きく変わる可能性もありますので、専門家でもある税理士に相談することをおすすめします。
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まとめ
個人事業主から法人成りをすべきか判断するには、以下の4つの目安でタイミングを見ることができます。
▼法人成りするべきか判断するポイント
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この4つのポイントをよく見て、法人成りがベストな選択であるか、ベストなタイミングで行えるか、しっかり検討するようにしましょう。
また、実際に何月に法人成りをするのか、その時期も大切です。法人成りをする時期については、以下の3つのポイントからタイミングを検討するとよいでしょう。
▼法人成りする適切な時期
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法人成りのタイミングは、事業や考え方によりケースバイケースで考えることも必要です。法人成りをする前に、事前に税理士など専門家に相談もしながら、慎重に進めましょう。