ひとりブラック企業の脱却方法の記事で、収入の種類を見極めることがひとりホワイト企業に転換する第一歩だとお伝えしました。
なぜ「収入の種類を見極める」ことをおすすめするかというと、「時間当たり労働生産性を改善する」ことに意識を向けていくためです。
時間の余裕を生み出すためには、時間当たり労働生産性を改善することが重要です。
労働生産性の計算式の記事でも触れましたが、改善するためには、まずは現状を正確に把握することが第一歩となります。
そのため、まずは現状の売上・収入の内訳を分析して、収入の種類を見極めましょう。
以前、一日の食事や運動の内容、体重などを記録していくレコーディング・ダイエットが話題になりました。
家計簿や会社の会計帳簿などもそうです。現状を正確に把握することで、有効な改善策を検討・実行できます。
何にどのくらいのお金を使っているのか、全く把握できていないとしたら、あるいは、把握しているつもりでもそれと実態とが乖離していたら、抜け漏れや無理・無駄が生じ、最適な形に改善することはできません。
時間当たり労働生産性を上げるということは、1時間当たりの稼ぎを上げるということになります。
すると、同じ金額(収入)を稼ぐために働かなければならない時間数が減ります。
結果として、ひとりブラック企業状態を脱却できます。
現在、仕事に追われてひとりブラック企業状態の方も、そうでない方も、セミリタイア一人社長になっていくためには、時間当たり労働生産性に意識を向けていくことが重要です。
実際にセミリタイア生活に移行できると、1時間当たりの稼ぎ(粗利)などは忘れてしまうというか、常に気にしなくて良くなります。
が、そうなるまでには、時間当たり労働生産性という指標は意識していくのがおすすめです。
その指標を常に意識し把握しておくことは、受ける案件・辞退する案件、提供を続ける商品・やめる商品、新たに始める事業・見送る事業、その他事業における施策・投資の実施など、何かと意思決定・経営判断の助けになります。
時間当たり労働生産性を上げるビジネスの仕組みを考えて、収入はそのまま、あるいは収入をさらに増やしながら、働く時間を減らしていきましょう。
時間当たり労働生産性とは
一人社長の時間当たり労働生産性=粗利益額÷労働時間
正確には、粗利益額ではなく付加価値額です。
付加価値額の計算方法は、学問的には様々あるようなのですが、実務的・簡易的には「付加価値=粗利益(=売上高-原価)」と考えて問題ありません。
できるだけ少ない労働時間で、より多くの成果・価値を生み出すほど、時間当たり労働生産性が高くなります。
時間当たり労働生産性を上げられるようなビジネスの仕組みを整え、レバレッジの効くビジネス収入を作り育てていくことで、一人社長は十分な収入を得ながら、働く時間を減らしセミリタイアすることができます。
【まずは現状把握】収入の種類を見極める
一人社長の収入には、「種類」があります。
【1】1対1労働収入(単純労働収入)
【2】1対多労働収入(レバレッジ労働収入)
【3】パッシブ収入(受動的収入、不労所得・半不労所得)
今毎月あるいは不定期で入ってくる収入を書き出して、それぞれどれに当てはまるのか、分類してみてください。
それぞれの詳細は、ひとりブラック企業の脱却方法の記事もあわせてご覧ください。
1対1労働収入(単純労働収入)
制作・開発・個別コンサルティングなど、一社一社(一人一人)サービス・商品を提供させていただく労働です。
1対1労働収入だけでは基本的に、収入が上がるほど仕事に追われて一人ブラック企業化していきます。
ちなみに、単純労働収入の「単純」とは決して「簡単」という意味ではありません。
次に挙げる「レバレッジ労働収入」と区別するために、クライアント一社一社(一人一人)対応する業務による収入を「単純労働収入」としました。
1対1労働収入(単純労働収入)は、個人事業主・フリーランスである限り、ほとんどレバレッジが効きません。
(従業員を雇って、給料以上に働いて稼いでもらえるなら、単純労働収入でもレバレッジが効きます。
企業が利益を出せるのは、基本的には、従業員を増やして給料以上に稼いでくれる仕組みができているためです。)
1対多労働収入(レバレッジ労働収入)
1回で複数・多数の方にサービス・商品を提供させていただく労働です。
1対1労働収入と違って、レバレッジが効きます。
1対1のクライアント業務では、ある程度単価を上げられたとしても、単価もどこまでも上げられるわけではなく、頭打ちになります。
1対多であれば、お客様ごとにお支払いいただく単価が変わらず、自分の稼働時間当たりの収入を大幅に高めることができます。
レバレッジが効くビジネスとしては、会員制グループコンサルティング、セミナー・講座・塾、講演、オンラインコミュニティー・オンラインサロン、自社商品・コンテンツ販売などのビジネスです。
コツコツと活動を積み重ねていくと、労働収入というほど「労働」をしなくて済みます。
働く時間を減らして、収入を増やして行きやすくなります。
なので、単なる労働収入ではなく、一部パッシブ収入・資産収入としての側面もあります。
例えば、セミナー・講座のコンテンツを一度作ると、継続的にブラッシュアップは必要ですが、概ね同じものを使い回して何度も売上を上げることができます。
さらに、そのコンテンツを動画や音声コンテンツとして、販売することもできます。
また、オンラインコミュニティー・オンラインサロンのビジネスでは、メンバーが10人から100人に増えたとしても、労力や時間は10倍まで必要ありません。
パッシブ収入(受動的収入)
労働の対価ではなく「資産」が生み出す収入です。
いわゆる不労所得です。『金持ち父さん貧乏父さん』の原書ではPassive Incomeとなっているようです。
「不労所得」というとあまりよくないイメージを抱く方もいるかもしれません。
しかし、収入を生み出す「資産」となるものを築き積み上げていくことで、「事業年数を経るほどに資産が大きくなっていき、収入が大きく、より安定していく」ということは経営する上で非常に大切なことです。
ちなみに、ここでいう「資産」とは、株式や不動産などを必ずしも指していません。
Webサイト・ブログ運営、YouTube・SNS運用による、アフィリエイト収入や広告収入などもおすすめです。
誰でも成功する訳ではありませんが、元手も要らず、軌道に乗ってくるとレバレッジが効きます。
ほとんど労力がかからない、または、比較的少ない労力で得られるパッシブ収入の柱を作り育てていくと、時間当たり労働生産性をぐんと上げやすくなります。
一人社長の収入の算式
ここでは経費や税金のことは一度脇に置いて、入ってくるお金という意味でざっくりと「収入」という言葉を使います。
一人社長の収入を次のように考えます。
一人社長の収入=1対1・1対多労働の時間当たり粗利×稼働時間+パッシブ収入
1対1・1対多労働の時間当たり粗利=(1対1労働収入の粗利+1対多労働収入の粗利)÷稼働時間
いきなりですと少しわかりづらいと思うので、以下の具体例もご覧いただけましたら幸いです。
※算式の意義をお伝えするための例であり、実在の人物をモデルにしている訳ではありませんのでご了承ください。
フリーランスエンジニアAさんの収入
●1対1労働収入(開発フリーランス案件) 時間単価 5,000円×月160時間=80万円
●1対多労働収入 なし
●パッシブ収入 なし
※簡略化のため、原価0円としています。
Aさんの収入 月収80万円
●1対1・1対多労働の時間当たり粗利=5,000円/時間
●稼働時間 月160時間
●パッシブ収入 なし
=>時間当たり労働生産性 5,000円/時間
制作・開発・コンサルティングなど受託案件が主な収入源のフリーランスの方は、収入の大部分が1対1労働収入ということになります。
1対1労働でも、例えばWeb制作・開発業なら、テンプレート化、システム化などの工夫により、多少ならレバレッジを効かせることができます。
しかし1対1労働収入だけだと、基本的にはほぼレバレッジが効かないので、収入が頭打ちになります。
現在1対1労働収入のみの方は、強みやスキル・知識を活かして、1対多労働収入やパッシブ収入を作り育てていくことを考えてみてください。
レバレッジが効く収入に活かせる強みや知識・ネタがあまりない方は、「Webマーケティング」などニーズがありお金を支払っていただきやすいことを新たに学び研究していくと中長期的に役立つと思います。
例えば、WebマーケティングやWeb集客を教えるコンサルタントなどは競合も多いですが、市場規模は数兆円レベルです。
市場自体が大きいと、ごくごく一部のシェアをとれるだけでも一人社長にとっては十分な収入を得やすいです。
とは言え、戦略やポジショニングなどを工夫しないと難しいですが、自社のビジネスに活かすためにもWebマーケティングは有用です。
クライアントのビジネスにも自社のビジネスにも役立ちます。
マーケティングセミナー企画・講師業Bさんの収入
●1対1労働収入(個別コンサルティング) 1人当たり1時間 1万円×月20人(20時間)=20万円
●1対多労働収入(マーケティング塾・セミナー) 1人当たり受講料 3万円×10人×月2回開催(1回5時間)=60万円
●パッシブ収入 なし
=>1対1・1対多労働の時間当たり粗利=(20万円+60万円)÷(20時間+10時間+セミナー企画準備その他業務50時間)=1万円/時間
※簡略化のため、原価0円としています。
Bさんの収入 月収80万円
●1対1・1対多労働の時間当たり粗利=10,000円/時間
●稼働時間 月80時間
●パッシブ収入 なし
=>時間当たり労働生産性 10,000円/時間
セミナー・講演・講師業の方の収入などは、1対多労働収入です。
AさんとBさんは同じ月収80万円ですが、1対1労働収入(Aさん)よりも1対多労働収入(Bさん)の方が、働く時間が半分で済んでいます。
これがレバレッジが効くということです。
コンサルティング業・Webサイト運営業一人社長Cさんの収入
●1対1労働収入(個別コンサルティング) 1人当たり1時間 2万円×月10人(10時間)=20万円
●1対多労働収入(グループコンサルティング) 1人当たり受講料 3万円×20人×月1回開催(5時間)=60万円
●パッシブ収入(アフィリエイト収入・広告収入+株式配当収入等) 50万円(更新・メンテナンス・確認等10時間)
=>1対1・1対多労働の時間当たり粗利=(20万円+60万円)÷(10時間+5時間+その他業務25時間)=2万円/時間
※簡略化のため、原価0円としています。
Cさんの収入 80万円+50万円=月収130万円
●1対1・1対多労働の時間当たり粗利=20,000円/時間
●稼働時間 月40時間
●パッシブ収入 50万円(10時間)
=>時間当たり労働生産性 130万円÷50時間=26,000円/時間
BさんとCさんは、1対1労働収入と1対多労働収入の合計金額が同じく月80万円です。
しかしCさんは、付加価値をつけて1対1労働収入の単価をBさんの2倍に設定しています。
1対多労働収入については、月2回に分けるのではなく1回に多くの人に参加していただくことで、稼働時間が半分となっています。
さらに、CさんにはAさんBさんになかったパッシブ収入があります。
アフィリエイトや広告収入などは、うまく軌道に乗せてパッシブ収入を増やしていくまでに非常に時間がかかります。
しかし、安定してくるとほとんど手間がかからず収入を得ることができます。
(とは言え、変化の激しい業界なので永遠に続くわけではなく、創意工夫も必要で楽ではないです。)
パッシブ収入があることで、時間当たり労働生産性がさらに高くなっています。
【改善方針】時間当たり労働生産性を上げるには
以上のように、時間当たり労働生産性を上げるためには、レバレッジの効くパッシブ収入や1対多労働収入を作り育てていくことが特に重要です。
どうしても1対1労働収入が主となる場合は、付加価値をつけて単価を上げることが必要となります。
まとめると、時間当たり労働生産性を上げるには、
【1】1対1・1対多労働の単価を上げる
(→付加価値をつける ※単価アップについては、いずれ別の記事で取り上げる予定です)
【2】1対多労働収入を増やす
(→1回で複数・多数に提供できるサービス・商品を作り販売していく、できるだけ1回当たりの人数を増やす)
【3】パッシブ収入を増やす
(→アフィリエイト収入・広告収入は簡単ではないものの、元手不要・低リスクでミドル~ハイリターンも狙えておすすめ)