4-1. 一人起業の重要指標「時間当たり粗利益」を把握する

一人起業のキーポイント!「時間当たり粗利益」を確認しよう
教える系・作る系ビジネスの視点で解説

コンサルタント、コーチ、カウンセラー、セラピスト、ヒーラー、トレーナー、講師などの教える系ビジネス、あるいはデザイナー、エンジニアなどの作る系ビジネスを一人で行っていると、どうしても売上の額ばかりに注目しがちです。しかし、実際には手残り(粗利益)がしっかり確保できているか、さらに時間効率よく稼げているかが大きなポイントとなります。

そこでおすすめしたいのが、「時間当たり粗利益」という指標を活用する方法です。本記事では、まず「粗利益」とは何かをわかりやすく解説したうえで、教える系・作る系いずれの一人ビジネスでも応用できる「時間当たり粗利益」の算出方法と、現状を見直すための実践ワークをご紹介します。


1. そもそも「粗利益」とは?

粗利益(あらりえき)は、「売上高 - 売上原価」で求められる利益のことです。「売上総利益」とも呼ばれ、事業の収益力を測るうえで重要な指標となります。

  • 売上高: 商品やサービスを提供して得た総額
  • 売上原価: その売上を生み出すために直接かかった費用(仕入れ、外注費、販売手数料など)

たとえば、1万円で商品・サービスを売り、直接コスト(仕入れや外注費など)が3,000円かかった場合:

粗利益 = 1万円 - 3,000円 = 7,000円

この7,000円は、事業を回すための経費(家賃や光熱費、通信費など)を支払ったり、利益を確保したりするための原資になります。

教える系・作る系における「売上原価」の例

  • 教える系ビジネス: オンライン講座システムの利用料、販売プラットフォーム手数料、案件ごとに発生する交通費や会場費など
  • 作る系ビジネス: 外注費、追加で購入が必要なソフトウェア利用料、素材・仕入れ費用、ツール・機材使用料など

一人起業の場合、自分自身の人件費は通常、売上原価に含めず経費(販売管理費)として扱うことが多い点に注意しましょう。まずは、「目に見える直接費」だけを洗い出して粗利益を把握するのが第一ステップです。


2. なぜ「時間当たり粗利益」が大切なのか?

一人ビジネスにおける最大のリソースは、あなた自身の時間です。たとえ売上が高くても、そこに莫大な時間をかけているなら実質的な時給は下がってしまいます。

そこでチェックしたい指標が、時間当たり粗利益です。これは、「実際どのくらいの効率で利益を生み出しているか」を測るシンプルかつ強力な指標になります。


3. 時間当たり粗利益の算出式

以下の計算式で求めます。

時間当たり粗利益 = (売上高 - 売上原価) / その業務にかかった時間

たとえば、ある案件での売上が5万円、直接コストが1万円、あなたの作業時間が5時間だった場合:

時間当たり粗利益 = (5万円 - 1万円) / 5h = 4万円 / 5h = 8,000円/時

これが、あなたの「実質的な時給」の目安と言えます。


4. 実践ワーク:時間当たり粗利益を洗い出そう

実際の案件や商品ごとに、以下の手順でデータを確認してみましょう。

  1. 案件・商品ごとの売上高をまとめる(直近1~3ヶ月、または主要案件)
  2. 売上原価(直接コスト)を算出
    • 「教える系」ならプラットフォーム手数料、会場費など
    • 「作る系」なら外注費、素材費、追加ソフトウェア費など
  3. その案件・商品にかかった時間を洗い出す
    • 打ち合わせ、制作・納品、クライアント対応など
  4. 時間当たり粗利益 = (売上高 - 売上原価) / かかった時間を一覧化する
  5. 最も高い案件最も低い案件を比較し、理由を考察する

例えば、あるデザイナーのケース:

  • Webデザイン案件(10万円受注、外注費2万円、作業時間20h)→ (10万 - 2万) / 20h = 4,000円/時
  • ロゴ制作案件(3万円、外注費0円、作業時間10h)→ 3万 / 10h = 3,000円/時

このように、案件ごとの「実質時給」を出すと、「どの案件が効率が良いか」「どこに手間がかかりすぎているか」が一目で分かります。


5. 発見した課題をどう活かすか?

時間当たり粗利益を比較すると、以下のような改善点や戦略が見えてくるはずです。

  • 価格設定を見直す(割に合わない案件は値上げや提供停止を検討)
  • 外注費や手数料を削減できるツールやプラットフォームを活用
  • 作業工程の効率化(AIツールやテンプレート、標準化マニュアルなど)
  • ビジネスモデルの転換(「作る系」から「教える系」へのシフトや、個別セッションをオンライン講座化してレバレッジをかける)

とくに教える系ビジネスの場合、個別対応ばかりだと時間が限られてしまいがちなので、オンライン講座やグループセッションなどの仕組みを導入すると、時間当たり粗利益が飛躍的に向上する可能性があります。
また、作る系ビジネスでも、自分が手を動かし続けるのではなく、スキルやノウハウを活かして教える系ビジネスに移行したり、オンライン講座という形でコンテンツを販売したりなど、時間効率の良い形に切り替える工夫が考えられます。


6. まとめ

一人ビジネスでは、まず「粗利益 = 売上 - 売上原価」の基本を理解し、そこに「時間」という要素を加えて時間当たり粗利益を算出することで、あなたの「実質的な時給」が把握できます。
売上の大きさだけでなく、どの程度の時間を使っているかを意識することで、効率よく手残りを増やすヒントが見つかるでしょう。
ぜひ今回のワークを試し、高い時間当たり粗利益を目指すための改善策を検討してみてください。特に、作る系→教える系への転身やコンテンツビジネス化など、収益モデルを変化させる選択肢も視野に入れると、より「自由と余裕」のある働き方が実現しやすくなります。